事業紹介メインビジュアル

【技術講座】往復動式の圧縮機構

圧縮機構

往復動式コンプレッサの基本構造(下図)。
原動機の回転運動をクランクシャフト、コネクティングロッドを介して往復動運動に転換し、ピストンを往復運動させることにより、シリンダ内に吸入した気体を圧縮します。

圧縮機構
ピストンの往復動帰国

コンプレッサの効率

体積効率

ピストン押しのけ量(ピストンが押しのける量)を式で表せば

ピストン押しのけ量

体積効率(ηv)とはピストン押しのけ量の何パーセントが実際に吐出される容量であるかを示す数値です。
ピストン押しのけ量は単位時間あたりのシリンダ行程容量です。

ピストン押しのけ量

理論体積効率は以下の式で表されます。

理論体積効率

実際には、上記計算式の中のκはシリンダ等で冷却されるので、ポリトロープ圧縮となり、ポリトロープ指数nを使います。

n:ポリトロープ指数(隙間容積に残留するガスの膨張係数でシリンダの冷却方式とその能力などにより異なる。空気の場合は約1.2)

また、バルブロス、リング類からのガスリーク、パイプロスなどのロスがあるので、“n”の値と併せてロス分を見込んで計画する必要があります。

全断熱効率

コンプレッサの動力はバルブ、流路、配管などの気体抵抗、機械損失、冷却の良否など、いろいろな要素により決まります。これらの要素を含めて実際に必要な動力がどれくらいかを示したのが軸動力(Ls)です。全断熱効率は、軸動力と理論断熱効率との比を示したものです。

前段熱効率

この式を用い、標準状態の空気1m3/minを圧縮するのに要する理論断熱動力を計算すると下表のようになります。 表より1段圧縮の場合に比べて、2段圧縮の方が動力が小さいことがわかります。

理論断熱動力表
吐出し圧力
MPa (G)
1段圧縮
(kW)
2段圧縮
(kW)
吐出し圧力
MPa (G)
2段圧縮
(kW)
0.05 0.7177 1.1 5.0087
0.1 1.2810 1.2 5.2021
0.15 1.7516 1.3 5.3831
0.2 2.1593 1.4 5.5533
0.25 2.5211 1.5 5.7141
0.3 2.8478 1.6 5.8665
0.35 3.1467 1.7 6.0114
0.4 3.4227 3.0334 1.8 6.1496
0.45 3.6796 3.2366 1.9 6.2817
0.5 3.9205 3.4245 2.0 6.4082
0.55 4.1474 3.5994 2.1 6.5297
0.6 4.3622 3.7632 2.2 6.6465
0.65 4.5664 3.9173 2.3 6.7591
0.7 4.7610 4.0628 2.4 6.8677
0.75 4.9472 4.2008 2.5 6.9727
0.8 5.1257 4.3319 2.6 7.0742
0.85 5.2972 4.4570 2.7 7.1726
0.9 5.4542 4.5766 2.8 7.2680
0.95 5.6219 4.6911 2.9 7.3606
1.0 5.7760 4.8011 3.0 7.4507

本表は1m3/minの自由空気を断熱圧縮する場合の理論動力を示します。

この全断熱効率の良否は、電力使用量にそのまま影響する重要な値です。機械の構造、バルブ形状、配置、リング形状など、各摺動部の摩擦ロスを考慮して、効率の良い機械を計画する必要があります。

圧縮温度

理論的にコンプレッサのシリンダが、外部との熱の授受がないとき、圧縮のために加えられる動力(機械エネルギー)は、すべて気体の温度上昇になる。理論的に断熱圧縮と考えれば、吐出気体の理論温度は下記の理論式により算出されます。

ダミーコンテンツ

参考に1段圧縮で比熱比1.4(空気、N2) の場合の圧力比と圧縮温度の関係を示します。

ダミーコンテンツ

実際温度

実際には上記計算式の中のκはシリンダなどで冷却されるので、ポリトロープ圧縮となり、理論温度よりは幾分下がった値となります。下がる程度はシリンダの冷却方式とその能力、圧力比、回転速度、冷却水温度、外気温、冷却水量、バルブ性能、機械の大きさなどにより異なります。

1段式の一般汎用エアーコンプレッサで20℃の大気を吸って0.7MPaGまで昇圧した場合には、圧力比はPd/Ps=(0.7+0.1013)MPaA/0.1013MPaA=7.91となり、上表で256℃となりますが、実際には170~190℃程度の温度になっています。これは冷却により比熱比κの値は、1.25~1.3程度の値になっているということになります。